地蔵岳(地蔵ヶ岳)、観音岳・薬師岳 じぞうだけ(じぞうがたけ)、かんのんだけ、やくしだけ
山行日 2013年9月13〜14日
標高 2764m、2840.4m、2780m
登山口 青木鉱泉
駐車場 あり(有料)
トイレ あり(青木鉱泉、鳳凰小屋、薬師小屋)
水場 鳳凰小屋(無料)
メンバ− 坊主さん、むらくも
坊主さんから電子お手紙着いた。
むらくもさんたら読まずにごみ箱に捨てた。
仕方がないので電子お手紙書いた。
さっきの手紙のご用事なぁに。
むらくもさんから電子お手紙着いた。
坊主さんたら読まずに捨てた。
坊主さん、怒って再び電子手紙を書いた。
「小河内岳へ行かないか。」
「おこうちだけ?それってどこにあるやま?」
「ノー、お・ご・う・ち・だ・け、こじゃないご・濁るんじゃ、南アルプスさ」
お〜、塩見岳の南にあるやつ、お花畑がタ−ンとあるじゃない。
坊主さんたらまたまた電子お手紙書いた。
むらくもさんたら読まずにごみ箱に捨てた。
仕方がないので電子お手紙書いた。
さっきの手紙のご用事なぁに。
「バッカヤロ〜、なにをやってんだ、しっかりしろ〜」
「すんません」
「ごみ箱へポイポイするんじゃねっちゅんで〜」
「すんませんすんません」
「返事は一回!ビシバシッ!ところでむらくもはん、鳳凰三山はどうじゃ、周回できるぞ」
「ほぉおー、ほうおう三山、周回、いいね〜」
「ダジャレはヤメッチュンじゃ〜、くだらん」
「ほっほ〜、おほほっほ〜、どや倍返しじゃ、ほほほほっほーほほほほほ〜10倍返しはいらんかえ、ほ…ほ…ホケキョ、最終回は100倍返しじゃ〜〜」
小河内岳はちょっと惜しい気がしたが、どうあがいてもピストンになる。
周回するにはル−トのないところを歩くしかないが、まさか、南アルプスでヤブ漕ぎをするつもりはない。
稜線上にお花畑があるのは魅力だが、小河内岳だけってのもなんとなく気にくわん。
いくからには二つ三つの山頂に立って、トカゲとまでは言わないが、そこからの絶景を楽しみたいものです。
小河内岳から近い山は塩見岳、100名山です。
ここを入れての縦走は…生憎わたしの足では一泊二日じゃムリ、二泊三日でもムリムリ、あきらめ〜。
ということで、小河内岳は立ち待ち立ち消えてしまい、鳳凰三山を青木鉱泉を起点にして反時計回りで周回することになりました。
台風シーズン・イン、秋雨前線の居座り、この時期はお天気のいい日を選ぶのが難しい。
曜日は一切問わないことにして、いつでも行ける状態で(大事な用事がある日は除いて)スタンバイ。
お天気はコロコロ変わった。
グッと我慢して待った、当初雨だった13日が晴れ模様に変わった、14日も同じく晴れ間が出る。
12日、午前9時出発なので、ゆっくり寝ておればいいのに、興奮してしまって5時過ぎに目が覚めてしまった。
荷物は前々日までに全部準備できている。
車もピカピカだし、ガソリンも満タン、タイヤの空気圧も高速用にちょい高めにした。
どうすりゃいいの、玄関先の道でも掃除するか。
最近たばこのポイ捨てが多くてかなわん、通勤時に根元まで吸ったフィルタ−を車窓から捨てて走り去る。
黙々と掃除をする。
掃除おいちゃんとはおらのことだ。
なんのこちゃ。
前回、常念岳へ行った折には20kg近くあったザックの重量を水・食糧・衣類・小物類すべてを見直し、おおよそ14kgに抑えた。
鳳凰小屋では沢から引かれた水が無料でいくらでも分けてくれる。
持っていく水はゼロ、現地調達なので大助かり。
大雨の影響で高松道の一部が11日朝まで通行止めだったが開通した。
12日、AM10時、津田の松原SAで坊主さんを拾って、山梨県須玉ICへ。
道の駅にらさきで車中泊。
13日、AM6時過ぎ、青木鉱泉駐車場(料金750円)に駐めて登山口へ。
周回コースは四つの滝があるドンドコ沢を遡って地蔵岳に登り、鳳凰小屋で一泊、そして翌日観音岳から薬師岳を縦走し、中道から下って青木鉱泉へと反時計回りに歩く。
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駐車場から直ぐの所にある青木鉱泉の趣のある建物、明治に建てられたものを復元したものだが、高知生まれの文人大町桂月がよく泊まった宿として知られているようだ。
薄着して山に入れば
残雪ふきの薹
6:23、登山届けを出して、ドンドコ道へと進む。
地図では登山道は左岸沿いについてるが、崩落したのか工事中の道は一旦右岸に渡り、そして左岸にある本来の登山道へと合流する。
すぐに分岐があって、右側尾根への薄い踏み跡への道と、沢沿いに進む道とに分かれるが、先では合流する。
尾根道は沢道より10分ほど多く時間が掛かるためか、ほとんどの登山者は沢沿いの道を歩いているようだった。
坊主さんとわたしとの普段からの山歩きスタイルの違いだろう、坊主さんは薄い踏み跡の方を歩きたがり、わたしは濃い方を選んでしまう。
ここでお互いに別行動、「それでは山小屋で会いましょう」そういうことになりそうだったが、坊主さんはグッと辛抱の子、偉い、四国のおしんだ。
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登山口では和歌山愛知(失礼しました、間違ってましたので訂正)から来られたご夫婦と挨拶を交わして先に出発したが、あっというまに追い抜かれた。
自宅から登山口まで3時間ほどで着くそうだが、昨夜は高速のPAで車中泊したそうだ。
ご主人はわたしと同い年の団塊世代、ご夫婦揃って元気がいい。
今夜は同じく鳳凰小屋泊まりだが、こちらはテント泊なので再びお会いすることができるかどうか。
いい天気だ、林の中に日が差してくる。
さい先いいぞ、山頂からの展望が期待できる。
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苔蒸した岩、沢、樹林、トリカブトの花咲く道を縫うようにジグザグくねくね登って、山麓の風景は四国の山とさほど変わらない。
途中何度か休息しながら登山口から2時間ほどで南精進ヶ滝に着いた。
看板には滝の名前の頭に南アルプス国立公園と書かれていた。
他でもところどころの看板に国立公園と記してあったが、国立と国定とどう違うのか疑問に思ったが、要するに管理するものが違うということらしい。
国立は国が管理・保護し、国定は都道府県が管理・保護しているとのこと。
坊主さんの話ではここ南アルプスの他に白山や中部山岳、日光、尾瀬、小笠原などが国立だそうで、特に中部山岳は白馬岳などを有する後立山連峰、剱岳などを有する立山連峰、槍ヶ岳などを有する穂高連峰など標高3,000m級の山々だそうです。
坊主さんとは一体何者だ?学者肌だ、えらいこと詳しい。
なんか他にも念仏のように唱えてたような気がしたが、坊主のお経はわからん。
わたしゃやにはチンとカンがプンプンだわ。
辺りにはミヤマセンキュウだろうか、群生して看板を隠しているようだった。
急斜面をロ−プを摑みながら上がると。
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小さな滝壺のある二段の滝が見えた。
滝壺が落差の割に小さいのは、岩が相当に固いのだろう。
シロヨメナのようですが、花弁がややまるまっちくてふくよか、キク科もいろいろあってややこしい。
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左下に石ゴロゴロの沢が見えている。
ドンドコ沢だろうか、心なしか沢の音がドンドコと流れているような気がした。
やがてその沢を渡ったが、地図では登山道はドンドコ沢を一度も渡るようにはなっていない。
南精進ヶ滝の上にある、小さな枝の沢のようだ。
沢の奥上を覗くと岩尾根が見えた。
たぶん地蔵岳から燕頭山(つばくろかしらやま)への稜線上にある2401m峰ピ−クと思われた。
キツリフネ
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9:07、鳳凰の滝分岐に到着。
辺りにはサラシナショウマの花穂が猫じゃらしのように揺れている。
鳳凰の滝には寄らずに、終わりかけのキオンの鄙びた黄色い花を眺めつつ進むと三つ目の白糸の滝(10:21)、滝の下の沢には大きな岩がゴロゴロ転がっていた。
眺めるだけにして、さらに50分ほど歩くとドンドコ沢四つ目の最上部、五色滝分岐に到着。
少し下って滝の流れ落ちる側まで行ってみた。
シャワーミストが冷たく体に吹き付けてくる。
落差はそれほど大きくはなくおおよそ50m程度のようでした。
ただし、滝の位置としては標高2200mと高い。
因みにこの下流域がドンドコ沢ですが、険しい沢のようで、滑落による遭難も結構起きているらしい。
五色滝と花が終わりかけのやや茶色く染まったミヤマシシウド。
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五色滝にはヤマハハコやホタルブクロが咲いていた。
そこから40分ほどのところで地図に水場として記されている沢に着いたが、沢は砂地化してしまって水などどこにも流れていない。
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センジュガンピも終わりに近づいているのか、ほろほろと数少ない。
12:25、登山口から6時間掛かって鳳凰小屋に辿り着いた。
小屋の若いスタッフたちのお疲れ様でしたのねぎらいの言葉が嬉しかった。
和歌山愛知からのご夫婦もベンチでくつろいでいて、わたしたちよりも40分ほど早く到着していたようだ。
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小屋の廻りには珍しい高山植物があれやこれやと群生している。
ピンクの花はタカネビランジ、これは翌日の観音岳稜線上でも岩場の蔭でたくさん見かけた。
青い花はキキョウかと思ったが、違った、小屋のご主人さんらしい方からホウオウシャジンだと教えてくれた。
これもこの後の地蔵岳の岩場で見ることが出来た。
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こちらはヤナギランの群生地、花はすでに散っていた。
ナナカマドの木には赤い実が重たそうに実っている。
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スタッフの方にテント代(一人800円)を支払って、テン場とトイレの位置を教えてもらう。
水場も説明してもらったが、沢から引いた黒いホ−スからは冷たい水が大きい流し台にジャバジャバ流れ込んでいる。
流し台のバケツにはビ−ル等がすでに冷たく冷やされて、ギンギンになっていた。
テン場でくつろぐ学生さんたち、小屋への道ぶちには咲き残りのヤナギランがまだまだ鮮やかだった。
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13:59、テント設営後予定どおりに地蔵岳へ登ることにした。
ヒナコゴメグサがわんさか咲いている。
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シラビソなどの樹林帯を抜けると砂地の急斜面が現れる。
讃岐の山の花崗土のような砂で、さらさらして花崗土よりほんの少し白っぽい。
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ズリズリと登って、14:52、お地蔵さんがたくさん並んでいる鞍部に到着。
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そこからは地蔵仏とも言われている尖ったオベリスクが大きな岩の間からニョッと天に突き上げていた。
ご夫婦が岩間のところで休まれていた。
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押っ取り刀の腰引け状態でオベリスクに近づく。
わたしゃはここまで。
坊主さんは岩に食らいついた。
尖った先端のところには岩の割れ目があり、ロ−プがぶら下がっている。
割れ間は写真では分かりにくいが、背丈の3倍程度だっただろうか、足がかりはなさそうだ。
岩の割れ目に靴をねじこんで、フリクションを効かしながら昇る、あとはロ−プを握って腕力で体を持ち上げるしかないように見えた。
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よじ登ろうとする坊主さん。
しかし、ルートが違う、取っついてるその左手に左斜め上への割れ目からだ。
ほんのちょっぴり階段状になった窪みがつけられている。
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一瞬、ガスが退いた。
オベリスクの向こうに見えたのは標高2307mの離山だろうか?
それにしては高すぎるような気がする、すぐ隣の標高おおよそ2710mのピ−クかも知れない。
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坊主さん、諦めて降りてきた。
昇れないことはないが、降りるときが危険、無理は禁物とのこと。
オベリスクを背景にシェーシェーのドッシェー、敗退のポーズでした。
雨が降り出した。
赤抜沢の頭ほ経て岩稜の稜線を歩いて鳳凰小屋の分岐から小屋へ下ろうと計画していたが、止めて、往路を下山。
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帰り道は標準タイム50分のところを、ズ−イズイと砂滑り、34分でテン場に帰り着いた。
途中、砂地に異様に大きな足跡、クマかと思ったが、人が遊び半分に登山道を外れてズリズリいわしたもののようだった。
坊主さん、スタッフの若い女の子をいつものようにいじくったあと、冷たい缶ビールでニタッ!
女の子が讃岐へうどんを食べに行きたいというので、帰り道、ご一緒しましょうと誘ったらしい。
女の子は体をよじって「いや〜ん、フフフ」だって、まんざらでもなさそう。
やっとれん!
ビ−ル飲んでさっさと寝よう。
隣のテントにはその後…深夜に…テントにそっと潜り込むスレ音が…待てど暮らせど朝までおません。
当たり前か。
聞こえてきたのは、オヤジ化した坊主のうるさい鼾だけでした。
夜には再び雨になり、日付が替わってもしばらく降っていたようだ。
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アサ〜!
まだ明けやらぬ真っ暗な時刻、雨は止んでいる。
3時頃だったろうか、隣の学生さんたちが賑やかに大きな笑い声をあげながら、テントの片付けをしだした。
その騒ぎに他のテントで寝てる人たちも目が覚めたようで、なんとなくみなさんテントの中でモゾモゾと起き出す気配。
学生さんたち、ますます賑やかになるばかり、とうとうぶち切れた。
「こりゃ〜、学生さんよ、ち−とは静かにせんかい、まだ寝てるものがおるんじゃぞ」
「……」 シ〜〜ン
もう一度寝ようと思ったが、寝られません。
起きて外へ出た。
学生さん、静か〜に片付けて、出発しました。
ちょっと言い過ぎたかな〜。
わたしたちも朝食を作りながら後片付け。
その間に夜は明け、空は一瞬焼けた。
6:00、出発、白い雲と青い空、モルゲンロ−トの時刻はすでに終わっている。
4時起床で、出発までに2時間掛かった。
テントが濡れているので少々は遅くなっていいのだが、あと30分は短縮しないと、今回の反省点の一つになった。
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ヒナコゴメグサの群生する道をとおり、沢におりて、急斜面を登り返す。
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樹林帯へと入っていき、やがて鳳凰小屋の赤い屋根が木陰に消えた。
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鳳凰小屋の位置は標高2382m、昨日は小屋に着く辺りで高山病の軽い頭痛を覚えた。
その後、標高2764mの地蔵岳へ登るとき、頭痛がやや重たくなったが、鼻での深呼吸を繰り返していると、頭痛は治まってきた。
今日も朝、目が覚めたときは再び頭痛があった。
鼻深呼吸を繰り返し、片付けにゴゾゴゾと体を動かしていると、治った。
標高2382から2700へと高度を上げているが、頭痛はこの後起きることはなかった。
今回は登山開始前のストレッチはしていないが、準備体操などして体を動かしたり、鼻での深呼吸は高山病に一定程度の効果があることが分かったのは嬉しいことでした。
右手には赤抜沢の頭から分岐に至る岩稜でしょうか、昔のずんぐりむっくりした大砲のような岩が聳えています。
ミヤマアキノキリンソウ?
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ダケカンバの葉がやや黄色っぽくなってきてます。
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出発して丁度1時間後の7:00に稜線分岐に出ました。
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稜線からは北岳−間ノ岳−農鳥岳の頂がどっしりと聳えていましたが、北岳はもちろんいずれも3000mを超す山々。
北岳と間ノ岳の間には中白根山、そして間ノ岳と農鳥山の間には西農鳥岳があって、この2山も3000mを超す。
この稜線上は農鳥小屋の北側でおおよそ2790mの鞍部があるが、そこが一番低いところ。
地図で見る限りは標高差おおよそ300m以内のアップダウンの稜線歩きのようです。
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紅葉が始まってました。
これはウラシマツツジでしょうか。
6月頃にドウダンツツジのような花が咲き、9月には黒紫色の実がなります。
写真を引き伸ばしてみると、葉陰に丸く黒っぽい実がなっていました。
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振り返って見ると、赤抜沢ノ頭の向こうに甲斐駒ヶ岳がピラミダルな姿で、いつかおいでよと耳元でそっと囁いてくれた。
その赤抜沢ノ頭からは早朝に出発した学生さんたちの姿が小さく見え隠れしている。
北岳は歩く稜線からずっと見えている。
八本歯ノ頭への尾根が僧侶の袈裟を広げたように、形よく左に突きだしている。
バットレスも含めて全体の山容を眺めるのに丁度いい感じの、嫋やかなまんまるっちい山がこちらの稜線から北岳の方向に向かって伸びている。
トウヤクリンドウ
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岩の間から観音岳が見えてきました。
山頂には早くも何人かの動く影。
岩陰のあちこちでタカネビランジの花。
なかには白いものもある、シロバナタカネビランジのようでした。
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高度を上げて再び振り返ってみた。
昨日登ったオベリスクが指を突き立てるような姿で空を指している。
ここから見ると砂滑りの斜面はかなり勾配がきつそうだ。
その向こうには雲海が広がり、雲海の上に登り甲斐のありそうな甲斐駒ヶ岳。
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7:51、すんなりと観音岳に立った。
三角点がある。
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平たい岩の上でどっかり胡座をかいた。
薬師岳の向こうに富士山がやや霞んで見える。
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こちらは八ヶ岳。
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左から農鳥岳、間ノ岳、北岳、仙丈ヶ岳、甲斐駒ヶ岳、そして右手前に地蔵岳。
左端の奥の山は岩の上で居合わせたご夫婦と一緒になって山座同定したが、結局分からなかった。
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8:19、テラスの岩場を離れ、薬師岳へ向けて出発。
30分もテラスで景色を楽しんでいたことになる。
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歩く稜線から八ヶ岳方面から奥秩父の山並みが雲の上にかすかに浮かんでいる。
左端が八ヶ岳、右手に薄く見える連山が奥秩父で金峰山、瑞垣山などの山並み。
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ここへ来る前の天気予報は昨日が晴れ時々曇りで雨が降る気配はなかった。
むしろ今日のほうがお天気は悪くて、雨が降っても仕方ないなと覚悟してきたが、蓋を開けてみると逆だった。
山の天気は変わりやすい、おまけに秋ときてるから余計のこと。
来てよかったと思う稜線歩きです。
コケモモの赤い実、一粒抓んで口に放り込んだ。
ほんちょっぴり酸味のある素な味がした。
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坊主さんがダブルストックで登ってくる。
わたしも前回の常念岳〜燕岳以来、ダブルストックを使っている。
荷にはなるが、足関節への負担は軽減され、体のバランスも保つことができいい感じだ。
ただストックに頼ることなく、歩く姿勢はできるだけ水平線にたいして垂直になるようにするほうが疲れは少ないようだ。
稜線の樹木は秋色がじわり。
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こちらはハイマツと紅葉が始まったナナカマド。
ウラシマツツジのなかに何かの花後の芯が残っている。
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8:49、薬師峠着。
西に5分ほど降りたところに、薬師小屋がある。
坊主さんが少し降りてみた、建物が見えたそうだ。
広い山頂の様子と、なぜか山頂標識にぶらさがった坊主さん。
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北岳バットレスと八本歯ノ頭。
坊主さんがここでしばらくトカゲがしたいと言う。
しかし、そろそろ下山しないと、高速道路を深夜に走るのは辛いことです。
この広い山頂と展望を知っていれば、計画を変えたのにね〜。
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世界遺産の富士山。
いままで麓から眺めるばかりで、さして登りたいとは思わない山だったが、こうやってあらためて山頂から眺める富士山を見ていると登りたくなるから不思議です。
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9:26、中道を通って下山開始。
地図ではここから青木鉱泉まで約4時間かかる。
こんなにもロングな下山は初めて、足が関節が悲鳴をあげへんか、不安だ。
富士山方向に雲海を眺めながら下っていく。
すぐに樹林帯に入り、やがて御座石に、ここまで山頂から40分少々。
まだまだ序の口だ。
東京から来られたのだろうか、軽井沢に別荘を持っているご夫婦とそのお友達ご夫婦をひょんなはずみで抜いた。
抜くつもりはなかったのだが、坊主さんがその方たちに一言、「うしろから突かんとってよ」
即返があった。
「うしろから蹴飛ばしてやる」
えらいこと口の悪いおばちゃんたちだ、言った後、ケタケタケタと笑った。
まあ、口の悪さはどっちもどっちか、いい勝負だ。ケヒケヒ
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靴擦れが出来て、マメが潰れた。
我慢して歩いていると、だんだんと痛くなって、そのうち歩き方が変になり、お陰で滑って転ぶ。
タンマ、靴を脱いでみると、破れた皮から血が滲み靴下を汚している。
歩き慣れた靴なので油断してしまった。
ガ−ゼとテ−プを貼って再び歩き出す。
ゴゼンタチバナも花が終わり、赤い実をつけていた。
不味いのでこの実を抓むことは控えたが、毒ではないそうで、果実酒にできるとか。
土地の開発造成などで数が減り続けており、準絶滅危惧種。
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花の咲いた感じのよい木に出合った。
他にはなくてこれ一本きり、なんの木だろう、ノリウツギのようだったが、はっきりとは分からない。
やがて笹の葉が茂る登山道を下る、四国の風景そっくりだ。
正午になったところで横たわった木に腰掛け、ランチにした。
笹原の中になにか大きな黒い物が目に入った。
クマ?
動かない、なにか朽ちた大きな木のようだった。
一度遠くからクマを眺めただけに、黒くて大きな物体をみると即反応してしまう、困ったことだ。
食べていると女性の登山者が一人喘ぎながら登ってきた。
少し歩いては喘ぎ声をあげながら立ち止まる。
次に二人の男性がやはり同じように喘ぎながら登っていった。
わたしたちが休憩している斜面は緩やかなので、たぶん、この下に長い急斜面が待ち構えているんだろうなと推測した。
休憩をそこそこに切り上げて、再び下り出す。
やがて上の林道に飛び出し、そこからの下りがきついこと。
ジグザグを繰り返し繰り返し、もうダメだ、足がガクガクだ。
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やっとこさ下の林道に近づく。
林道入り口にはある製紙会社の朽ちた山林の家。
長い林道歩き、足を運ぶのが精一杯だった。
林道から近道の山道に入り、沢を渡って、13:50、青木鉱泉に帰りつく。
坊主さん、お疲れさんでした。
帰り道に温泉にも浸かりましたが、帰宅後二日間はひどい筋肉痛、いつもの散歩道ギクシャクとロボット歩き。
弱すぎる脚ですが、それでも止められない山歩き、筋肉痛が治まるとまたまた行きたい病が騒いでます。
困ったもんです。
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<第一日>
青木鉱泉登山口6:23−南精進ヶ滝8:20−白糸滝10:21−11:10五色の滝11:19−12:25鳳凰小屋テン場13:59−14:52地蔵岳15:16−15:50鳳凰小屋テン場
<第二日>
鳳凰小屋テン場6:00−鳳凰小屋分岐(稜線)7:00−7:51観音岳8:19−8:49薬師岳9:26−御座石10:09−(昼食休憩15分)−13:50青木鉱泉登山口
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※地図上左クリック→グーグルマップへ移動
山行日 2013年9月13〜14日
標高 2764m、2840.4m、2780m
登山口 青木鉱泉
駐車場 あり(有料)
トイレ あり(青木鉱泉、鳳凰小屋、薬師小屋)
水場 鳳凰小屋(無料)
メンバ− 坊主さん、むらくも
坊主さんから電子お手紙着いた。
むらくもさんたら読まずにごみ箱に捨てた。
仕方がないので電子お手紙書いた。
さっきの手紙のご用事なぁに。
むらくもさんから電子お手紙着いた。
坊主さんたら読まずに捨てた。
坊主さん、怒って再び電子手紙を書いた。
「小河内岳へ行かないか。」
「おこうちだけ?それってどこにあるやま?」
「ノー、お・ご・う・ち・だ・け、こじゃないご・濁るんじゃ、南アルプスさ」
お〜、塩見岳の南にあるやつ、お花畑がタ−ンとあるじゃない。
坊主さんたらまたまた電子お手紙書いた。
むらくもさんたら読まずにごみ箱に捨てた。
仕方がないので電子お手紙書いた。
さっきの手紙のご用事なぁに。
「バッカヤロ〜、なにをやってんだ、しっかりしろ〜」
「すんません」
「ごみ箱へポイポイするんじゃねっちゅんで〜」
「すんませんすんません」
「返事は一回!ビシバシッ!ところでむらくもはん、鳳凰三山はどうじゃ、周回できるぞ」
「ほぉおー、ほうおう三山、周回、いいね〜」
「ダジャレはヤメッチュンじゃ〜、くだらん」
「ほっほ〜、おほほっほ〜、どや倍返しじゃ、ほほほほっほーほほほほほ〜10倍返しはいらんかえ、ほ…ほ…ホケキョ、最終回は100倍返しじゃ〜〜」
小河内岳はちょっと惜しい気がしたが、どうあがいてもピストンになる。
周回するにはル−トのないところを歩くしかないが、まさか、南アルプスでヤブ漕ぎをするつもりはない。
稜線上にお花畑があるのは魅力だが、小河内岳だけってのもなんとなく気にくわん。
いくからには二つ三つの山頂に立って、トカゲとまでは言わないが、そこからの絶景を楽しみたいものです。
小河内岳から近い山は塩見岳、100名山です。
ここを入れての縦走は…生憎わたしの足では一泊二日じゃムリ、二泊三日でもムリムリ、あきらめ〜。
ということで、小河内岳は立ち待ち立ち消えてしまい、鳳凰三山を青木鉱泉を起点にして反時計回りで周回することになりました。
台風シーズン・イン、秋雨前線の居座り、この時期はお天気のいい日を選ぶのが難しい。
曜日は一切問わないことにして、いつでも行ける状態で(大事な用事がある日は除いて)スタンバイ。
お天気はコロコロ変わった。
グッと我慢して待った、当初雨だった13日が晴れ模様に変わった、14日も同じく晴れ間が出る。
12日、午前9時出発なので、ゆっくり寝ておればいいのに、興奮してしまって5時過ぎに目が覚めてしまった。
荷物は前々日までに全部準備できている。
車もピカピカだし、ガソリンも満タン、タイヤの空気圧も高速用にちょい高めにした。
どうすりゃいいの、玄関先の道でも掃除するか。
最近たばこのポイ捨てが多くてかなわん、通勤時に根元まで吸ったフィルタ−を車窓から捨てて走り去る。
黙々と掃除をする。
掃除おいちゃんとはおらのことだ。
なんのこちゃ。
前回、常念岳へ行った折には20kg近くあったザックの重量を水・食糧・衣類・小物類すべてを見直し、おおよそ14kgに抑えた。
鳳凰小屋では沢から引かれた水が無料でいくらでも分けてくれる。
持っていく水はゼロ、現地調達なので大助かり。
大雨の影響で高松道の一部が11日朝まで通行止めだったが開通した。
12日、AM10時、津田の松原SAで坊主さんを拾って、山梨県須玉ICへ。
道の駅にらさきで車中泊。
13日、AM6時過ぎ、青木鉱泉駐車場(料金750円)に駐めて登山口へ。
周回コースは四つの滝があるドンドコ沢を遡って地蔵岳に登り、鳳凰小屋で一泊、そして翌日観音岳から薬師岳を縦走し、中道から下って青木鉱泉へと反時計回りに歩く。


駐車場から直ぐの所にある青木鉱泉の趣のある建物、明治に建てられたものを復元したものだが、高知生まれの文人大町桂月がよく泊まった宿として知られているようだ。
薄着して山に入れば
残雪ふきの薹
6:23、登山届けを出して、ドンドコ道へと進む。
地図では登山道は左岸沿いについてるが、崩落したのか工事中の道は一旦右岸に渡り、そして左岸にある本来の登山道へと合流する。
すぐに分岐があって、右側尾根への薄い踏み跡への道と、沢沿いに進む道とに分かれるが、先では合流する。
尾根道は沢道より10分ほど多く時間が掛かるためか、ほとんどの登山者は沢沿いの道を歩いているようだった。
坊主さんとわたしとの普段からの山歩きスタイルの違いだろう、坊主さんは薄い踏み跡の方を歩きたがり、わたしは濃い方を選んでしまう。
ここでお互いに別行動、「それでは山小屋で会いましょう」そういうことになりそうだったが、坊主さんはグッと辛抱の子、偉い、四国のおしんだ。


登山口では和歌山愛知(失礼しました、間違ってましたので訂正)から来られたご夫婦と挨拶を交わして先に出発したが、あっというまに追い抜かれた。
自宅から登山口まで3時間ほどで着くそうだが、昨夜は高速のPAで車中泊したそうだ。
ご主人はわたしと同い年の団塊世代、ご夫婦揃って元気がいい。
今夜は同じく鳳凰小屋泊まりだが、こちらはテント泊なので再びお会いすることができるかどうか。
いい天気だ、林の中に日が差してくる。
さい先いいぞ、山頂からの展望が期待できる。


苔蒸した岩、沢、樹林、トリカブトの花咲く道を縫うようにジグザグくねくね登って、山麓の風景は四国の山とさほど変わらない。
途中何度か休息しながら登山口から2時間ほどで南精進ヶ滝に着いた。
看板には滝の名前の頭に南アルプス国立公園と書かれていた。
他でもところどころの看板に国立公園と記してあったが、国立と国定とどう違うのか疑問に思ったが、要するに管理するものが違うということらしい。
国立は国が管理・保護し、国定は都道府県が管理・保護しているとのこと。
坊主さんの話ではここ南アルプスの他に白山や中部山岳、日光、尾瀬、小笠原などが国立だそうで、特に中部山岳は白馬岳などを有する後立山連峰、剱岳などを有する立山連峰、槍ヶ岳などを有する穂高連峰など標高3,000m級の山々だそうです。
坊主さんとは一体何者だ?学者肌だ、えらいこと詳しい。
なんか他にも念仏のように唱えてたような気がしたが、坊主のお経はわからん。
わたしゃやにはチンとカンがプンプンだわ。
辺りにはミヤマセンキュウだろうか、群生して看板を隠しているようだった。
急斜面をロ−プを摑みながら上がると。


小さな滝壺のある二段の滝が見えた。
滝壺が落差の割に小さいのは、岩が相当に固いのだろう。
シロヨメナのようですが、花弁がややまるまっちくてふくよか、キク科もいろいろあってややこしい。


左下に石ゴロゴロの沢が見えている。
ドンドコ沢だろうか、心なしか沢の音がドンドコと流れているような気がした。
やがてその沢を渡ったが、地図では登山道はドンドコ沢を一度も渡るようにはなっていない。
南精進ヶ滝の上にある、小さな枝の沢のようだ。
沢の奥上を覗くと岩尾根が見えた。
たぶん地蔵岳から燕頭山(つばくろかしらやま)への稜線上にある2401m峰ピ−クと思われた。
キツリフネ


9:07、鳳凰の滝分岐に到着。
辺りにはサラシナショウマの花穂が猫じゃらしのように揺れている。
鳳凰の滝には寄らずに、終わりかけのキオンの鄙びた黄色い花を眺めつつ進むと三つ目の白糸の滝(10:21)、滝の下の沢には大きな岩がゴロゴロ転がっていた。
眺めるだけにして、さらに50分ほど歩くとドンドコ沢四つ目の最上部、五色滝分岐に到着。
少し下って滝の流れ落ちる側まで行ってみた。
シャワーミストが冷たく体に吹き付けてくる。
落差はそれほど大きくはなくおおよそ50m程度のようでした。
ただし、滝の位置としては標高2200mと高い。
因みにこの下流域がドンドコ沢ですが、険しい沢のようで、滑落による遭難も結構起きているらしい。
五色滝と花が終わりかけのやや茶色く染まったミヤマシシウド。


五色滝にはヤマハハコやホタルブクロが咲いていた。
そこから40分ほどのところで地図に水場として記されている沢に着いたが、沢は砂地化してしまって水などどこにも流れていない。


センジュガンピも終わりに近づいているのか、ほろほろと数少ない。
12:25、登山口から6時間掛かって鳳凰小屋に辿り着いた。
小屋の若いスタッフたちのお疲れ様でしたのねぎらいの言葉が嬉しかった。
和歌山愛知からのご夫婦もベンチでくつろいでいて、わたしたちよりも40分ほど早く到着していたようだ。


小屋の廻りには珍しい高山植物があれやこれやと群生している。
ピンクの花はタカネビランジ、これは翌日の観音岳稜線上でも岩場の蔭でたくさん見かけた。
青い花はキキョウかと思ったが、違った、小屋のご主人さんらしい方からホウオウシャジンだと教えてくれた。
これもこの後の地蔵岳の岩場で見ることが出来た。


こちらはヤナギランの群生地、花はすでに散っていた。
ナナカマドの木には赤い実が重たそうに実っている。


スタッフの方にテント代(一人800円)を支払って、テン場とトイレの位置を教えてもらう。
水場も説明してもらったが、沢から引いた黒いホ−スからは冷たい水が大きい流し台にジャバジャバ流れ込んでいる。
流し台のバケツにはビ−ル等がすでに冷たく冷やされて、ギンギンになっていた。
テン場でくつろぐ学生さんたち、小屋への道ぶちには咲き残りのヤナギランがまだまだ鮮やかだった。


13:59、テント設営後予定どおりに地蔵岳へ登ることにした。
ヒナコゴメグサがわんさか咲いている。

シラビソなどの樹林帯を抜けると砂地の急斜面が現れる。
讃岐の山の花崗土のような砂で、さらさらして花崗土よりほんの少し白っぽい。


ズリズリと登って、14:52、お地蔵さんがたくさん並んでいる鞍部に到着。


そこからは地蔵仏とも言われている尖ったオベリスクが大きな岩の間からニョッと天に突き上げていた。
ご夫婦が岩間のところで休まれていた。

押っ取り刀の腰引け状態でオベリスクに近づく。
わたしゃはここまで。
坊主さんは岩に食らいついた。
尖った先端のところには岩の割れ目があり、ロ−プがぶら下がっている。
割れ間は写真では分かりにくいが、背丈の3倍程度だっただろうか、足がかりはなさそうだ。
岩の割れ目に靴をねじこんで、フリクションを効かしながら昇る、あとはロ−プを握って腕力で体を持ち上げるしかないように見えた。


よじ登ろうとする坊主さん。
しかし、ルートが違う、取っついてるその左手に左斜め上への割れ目からだ。
ほんのちょっぴり階段状になった窪みがつけられている。

一瞬、ガスが退いた。
オベリスクの向こうに見えたのは標高2307mの離山だろうか?
それにしては高すぎるような気がする、すぐ隣の標高おおよそ2710mのピ−クかも知れない。

坊主さん、諦めて降りてきた。
昇れないことはないが、降りるときが危険、無理は禁物とのこと。
オベリスクを背景にシェーシェーのドッシェー、敗退のポーズでした。
雨が降り出した。
赤抜沢の頭ほ経て岩稜の稜線を歩いて鳳凰小屋の分岐から小屋へ下ろうと計画していたが、止めて、往路を下山。


帰り道は標準タイム50分のところを、ズ−イズイと砂滑り、34分でテン場に帰り着いた。
途中、砂地に異様に大きな足跡、クマかと思ったが、人が遊び半分に登山道を外れてズリズリいわしたもののようだった。
坊主さん、スタッフの若い女の子をいつものようにいじくったあと、冷たい缶ビールでニタッ!
女の子が讃岐へうどんを食べに行きたいというので、帰り道、ご一緒しましょうと誘ったらしい。
女の子は体をよじって「いや〜ん、フフフ」だって、まんざらでもなさそう。
やっとれん!
ビ−ル飲んでさっさと寝よう。
隣のテントにはその後…深夜に…テントにそっと潜り込むスレ音が…待てど暮らせど朝までおません。
当たり前か。
聞こえてきたのは、オヤジ化した坊主のうるさい鼾だけでした。
夜には再び雨になり、日付が替わってもしばらく降っていたようだ。


アサ〜!
まだ明けやらぬ真っ暗な時刻、雨は止んでいる。
3時頃だったろうか、隣の学生さんたちが賑やかに大きな笑い声をあげながら、テントの片付けをしだした。
その騒ぎに他のテントで寝てる人たちも目が覚めたようで、なんとなくみなさんテントの中でモゾモゾと起き出す気配。
学生さんたち、ますます賑やかになるばかり、とうとうぶち切れた。
「こりゃ〜、学生さんよ、ち−とは静かにせんかい、まだ寝てるものがおるんじゃぞ」
「……」 シ〜〜ン
もう一度寝ようと思ったが、寝られません。
起きて外へ出た。
学生さん、静か〜に片付けて、出発しました。
ちょっと言い過ぎたかな〜。
わたしたちも朝食を作りながら後片付け。
その間に夜は明け、空は一瞬焼けた。
6:00、出発、白い雲と青い空、モルゲンロ−トの時刻はすでに終わっている。
4時起床で、出発までに2時間掛かった。
テントが濡れているので少々は遅くなっていいのだが、あと30分は短縮しないと、今回の反省点の一つになった。

ヒナコゴメグサの群生する道をとおり、沢におりて、急斜面を登り返す。

樹林帯へと入っていき、やがて鳳凰小屋の赤い屋根が木陰に消えた。


鳳凰小屋の位置は標高2382m、昨日は小屋に着く辺りで高山病の軽い頭痛を覚えた。
その後、標高2764mの地蔵岳へ登るとき、頭痛がやや重たくなったが、鼻での深呼吸を繰り返していると、頭痛は治まってきた。
今日も朝、目が覚めたときは再び頭痛があった。
鼻深呼吸を繰り返し、片付けにゴゾゴゾと体を動かしていると、治った。
標高2382から2700へと高度を上げているが、頭痛はこの後起きることはなかった。
今回は登山開始前のストレッチはしていないが、準備体操などして体を動かしたり、鼻での深呼吸は高山病に一定程度の効果があることが分かったのは嬉しいことでした。
右手には赤抜沢の頭から分岐に至る岩稜でしょうか、昔のずんぐりむっくりした大砲のような岩が聳えています。
ミヤマアキノキリンソウ?


ダケカンバの葉がやや黄色っぽくなってきてます。


出発して丁度1時間後の7:00に稜線分岐に出ました。

稜線からは北岳−間ノ岳−農鳥岳の頂がどっしりと聳えていましたが、北岳はもちろんいずれも3000mを超す山々。
北岳と間ノ岳の間には中白根山、そして間ノ岳と農鳥山の間には西農鳥岳があって、この2山も3000mを超す。
この稜線上は農鳥小屋の北側でおおよそ2790mの鞍部があるが、そこが一番低いところ。
地図で見る限りは標高差おおよそ300m以内のアップダウンの稜線歩きのようです。

紅葉が始まってました。
これはウラシマツツジでしょうか。
6月頃にドウダンツツジのような花が咲き、9月には黒紫色の実がなります。
写真を引き伸ばしてみると、葉陰に丸く黒っぽい実がなっていました。


振り返って見ると、赤抜沢ノ頭の向こうに甲斐駒ヶ岳がピラミダルな姿で、いつかおいでよと耳元でそっと囁いてくれた。
その赤抜沢ノ頭からは早朝に出発した学生さんたちの姿が小さく見え隠れしている。
北岳は歩く稜線からずっと見えている。
八本歯ノ頭への尾根が僧侶の袈裟を広げたように、形よく左に突きだしている。
バットレスも含めて全体の山容を眺めるのに丁度いい感じの、嫋やかなまんまるっちい山がこちらの稜線から北岳の方向に向かって伸びている。
トウヤクリンドウ


岩の間から観音岳が見えてきました。
山頂には早くも何人かの動く影。
岩陰のあちこちでタカネビランジの花。
なかには白いものもある、シロバナタカネビランジのようでした。


高度を上げて再び振り返ってみた。
昨日登ったオベリスクが指を突き立てるような姿で空を指している。
ここから見ると砂滑りの斜面はかなり勾配がきつそうだ。
その向こうには雲海が広がり、雲海の上に登り甲斐のありそうな甲斐駒ヶ岳。

7:51、すんなりと観音岳に立った。
三角点がある。


平たい岩の上でどっかり胡座をかいた。
薬師岳の向こうに富士山がやや霞んで見える。

こちらは八ヶ岳。

左から農鳥岳、間ノ岳、北岳、仙丈ヶ岳、甲斐駒ヶ岳、そして右手前に地蔵岳。
左端の奥の山は岩の上で居合わせたご夫婦と一緒になって山座同定したが、結局分からなかった。

8:19、テラスの岩場を離れ、薬師岳へ向けて出発。
30分もテラスで景色を楽しんでいたことになる。

歩く稜線から八ヶ岳方面から奥秩父の山並みが雲の上にかすかに浮かんでいる。
左端が八ヶ岳、右手に薄く見える連山が奥秩父で金峰山、瑞垣山などの山並み。

ここへ来る前の天気予報は昨日が晴れ時々曇りで雨が降る気配はなかった。
むしろ今日のほうがお天気は悪くて、雨が降っても仕方ないなと覚悟してきたが、蓋を開けてみると逆だった。
山の天気は変わりやすい、おまけに秋ときてるから余計のこと。
来てよかったと思う稜線歩きです。
コケモモの赤い実、一粒抓んで口に放り込んだ。
ほんちょっぴり酸味のある素な味がした。


坊主さんがダブルストックで登ってくる。
わたしも前回の常念岳〜燕岳以来、ダブルストックを使っている。
荷にはなるが、足関節への負担は軽減され、体のバランスも保つことができいい感じだ。
ただストックに頼ることなく、歩く姿勢はできるだけ水平線にたいして垂直になるようにするほうが疲れは少ないようだ。
稜線の樹木は秋色がじわり。


こちらはハイマツと紅葉が始まったナナカマド。
ウラシマツツジのなかに何かの花後の芯が残っている。


8:49、薬師峠着。
西に5分ほど降りたところに、薬師小屋がある。
坊主さんが少し降りてみた、建物が見えたそうだ。
広い山頂の様子と、なぜか山頂標識にぶらさがった坊主さん。


北岳バットレスと八本歯ノ頭。
坊主さんがここでしばらくトカゲがしたいと言う。
しかし、そろそろ下山しないと、高速道路を深夜に走るのは辛いことです。
この広い山頂と展望を知っていれば、計画を変えたのにね〜。

世界遺産の富士山。
いままで麓から眺めるばかりで、さして登りたいとは思わない山だったが、こうやってあらためて山頂から眺める富士山を見ていると登りたくなるから不思議です。

9:26、中道を通って下山開始。
地図ではここから青木鉱泉まで約4時間かかる。
こんなにもロングな下山は初めて、足が関節が悲鳴をあげへんか、不安だ。
富士山方向に雲海を眺めながら下っていく。
すぐに樹林帯に入り、やがて御座石に、ここまで山頂から40分少々。
まだまだ序の口だ。
東京から来られたのだろうか、軽井沢に別荘を持っているご夫婦とそのお友達ご夫婦をひょんなはずみで抜いた。
抜くつもりはなかったのだが、坊主さんがその方たちに一言、「うしろから突かんとってよ」
即返があった。
「うしろから蹴飛ばしてやる」
えらいこと口の悪いおばちゃんたちだ、言った後、ケタケタケタと笑った。
まあ、口の悪さはどっちもどっちか、いい勝負だ。ケヒケヒ


靴擦れが出来て、マメが潰れた。
我慢して歩いていると、だんだんと痛くなって、そのうち歩き方が変になり、お陰で滑って転ぶ。
タンマ、靴を脱いでみると、破れた皮から血が滲み靴下を汚している。
歩き慣れた靴なので油断してしまった。
ガ−ゼとテ−プを貼って再び歩き出す。
ゴゼンタチバナも花が終わり、赤い実をつけていた。
不味いのでこの実を抓むことは控えたが、毒ではないそうで、果実酒にできるとか。
土地の開発造成などで数が減り続けており、準絶滅危惧種。


花の咲いた感じのよい木に出合った。
他にはなくてこれ一本きり、なんの木だろう、ノリウツギのようだったが、はっきりとは分からない。
やがて笹の葉が茂る登山道を下る、四国の風景そっくりだ。
正午になったところで横たわった木に腰掛け、ランチにした。
笹原の中になにか大きな黒い物が目に入った。
クマ?
動かない、なにか朽ちた大きな木のようだった。
一度遠くからクマを眺めただけに、黒くて大きな物体をみると即反応してしまう、困ったことだ。
食べていると女性の登山者が一人喘ぎながら登ってきた。
少し歩いては喘ぎ声をあげながら立ち止まる。
次に二人の男性がやはり同じように喘ぎながら登っていった。
わたしたちが休憩している斜面は緩やかなので、たぶん、この下に長い急斜面が待ち構えているんだろうなと推測した。
休憩をそこそこに切り上げて、再び下り出す。
やがて上の林道に飛び出し、そこからの下りがきついこと。
ジグザグを繰り返し繰り返し、もうダメだ、足がガクガクだ。


やっとこさ下の林道に近づく。
林道入り口にはある製紙会社の朽ちた山林の家。
長い林道歩き、足を運ぶのが精一杯だった。
林道から近道の山道に入り、沢を渡って、13:50、青木鉱泉に帰りつく。
坊主さん、お疲れさんでした。
帰り道に温泉にも浸かりましたが、帰宅後二日間はひどい筋肉痛、いつもの散歩道ギクシャクとロボット歩き。
弱すぎる脚ですが、それでも止められない山歩き、筋肉痛が治まるとまたまた行きたい病が騒いでます。
困ったもんです。


<第一日>
青木鉱泉登山口6:23−南精進ヶ滝8:20−白糸滝10:21−11:10五色の滝11:19−12:25鳳凰小屋テン場13:59−14:52地蔵岳15:16−15:50鳳凰小屋テン場
<第二日>
鳳凰小屋テン場6:00−鳳凰小屋分岐(稜線)7:00−7:51観音岳8:19−8:49薬師岳9:26−御座石10:09−(昼食休憩15分)−13:50青木鉱泉登山口

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